作者
堂場瞬一
題名
焦土の刑事
出版社
講談社
出版社による梗概
東京は壊れつつある。見慣れぬ街に変わりつつある――。
1945年。B29による空襲の翌朝、防空壕の中で女性の遺体が発見される。首には刃物による切り傷が。無数の遺体と目の前のたったひとつの遺体。
これは戦争ではない。個人に対する犯罪だ――。
捜査を進める京橋署刑事の高峰は署長から思わぬ言葉を聞かされる。「あれは、空襲の被害者だ」。殺人事件のもみ消し――そしてまた殺人が起きる。
高峰は、中学からの同級生で特高に籍をを置く海老沢とともに、終戦をまたいで「戦時下の殺人」の犯人を追い詰めていく。
警察小説の旗手が満を持して描く、壮大な警察大河シリーズ、ここに開幕。
定価
四六変型 本体1,700円+税
感想
梗概にありますようにシリーズ化するようですが、駄作です。
相変わらず自分の女房を「嫁」と呼称する間違いを犯しております。
両親ともども東京生まれの男性が大東亜戦争中に女房を「嫁」とは言いません。
まあ、そんな些末な誤謬は脇に置きましょう。
主人公のひとりは特高(警察)で、舞台台本の検閲をしています。
脚本家との激しい駆け引きも描かれております。
もう一人の主人公は刑事として殺人事件の捜査を上からの命により中断させられます。
自分ひとりで密かに捜査を継続するのですが、上司との板挟みで遅々として捜査は進みません。
そんな戦争に起因する軋轢を描いた導入部(37ページの6行目)に次のような文章があります。
(引用ここから)
八年前――中国での事変が発生する前の食卓を懐かしく思い出すこともある。
(引用ここまで)
この述懐は特高の主人公のものです。
なぜ「支那事変」という当時の日本政府が決めた公称を用いなかったのでしょう。特高(警察)の人間ですよ。この一文をそっくり落とすという手もあったはずです。
作者自身が言い換えたものか、講談社の校閲部が校正したものかは不明ですが、上梓された以上は作者の責任ですね。
こんな姑息(本来の意味です:根本的に対策を講じるのではなく、一時的にその場を切り抜けることができればいいとする様子)な言い換えをする作者に、本書の内容(戦争に起因する軋轢)を書く資格はありません。
もともと作者の堂場には時代考証に甘いところがあります。
特高が後の公安と代わり、刑事との対比をこのシリーズでは描くのでしょうが、底が浅すぎます。
文庫化に際して前記の修正がされないかぎりお蔵入りです。
0/10点(前記がなくても3点です)


