作者
倉阪鬼一郎
題名
京なさけ 小料理のどか屋 人情帳19
出版社
二見書房
出版社による梗概
皿を食わせるのかと、客が怒る老舗京料理屋。
時吉に立て直せるか?
このままでは店が潰れる!客をも見下す大女将と板長。
二人の料簡違いを窘めんと、跡取りの願いで時吉は京へ。事態は思わぬ展開をみせ…。
時吉とおちよの旅籠付き小料理のどか屋に、京から老舗料理屋の跡取りが訪ねてきた。時吉の料理の師・長吉が若い頃に修業した四条大宮の宮戸屋の若旦那・京造だった。父の死後、母と板長が形にこだわって心のこもらぬ料理しか出さぬので、客が怒って、このままでは店が潰れてしまう。なんとか料簡違いを窘めて店を立て直してほしいというのだ。時吉は京に行ったものの……。
********本書に登場する小料理**********
・蛸のやわらか煮 ・蓮根せんべい ・烏賊の黄金扇 ・狸汁
・常節の鹿の子煮 ・椎茸雑炊 ・里芋の柚子味噌がけ
・秋刀魚の菊花巻き ・穴子の八幡巻き ・翡翠揚げ松葉刺し
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定価
文庫版 本体648円+税
感想
シリーズの19作目になります。あたくしは著者の他の作品は現在読んでおりませんので、近作については分かりません。ですが、今作を読んで驚きました。透明感のある文体とストーリーが見事に融合しております。
倉阪はこんなに上手かったのか? ここに来て作家として数段昇ったのか?
おそらく後者だと思います。
こうなると倉阪の最近の現在物を読んでみたくなりますが、このところあまり書いていないようです。
話を今作に戻しまして、
特に大きな出来事が描かれてもいませんし、シリーズが急展開するわけでもありません。
料理や和歌が主役でもありませんし、人が主役でさえありません。
ですが、そこが良いのです。いや、それで良いと思うのです。このシリーズの眼目は和気が満ちていることにあるのですから……。
シリーズものの性(さが)として、多くの登場人物があります。四代続いている猫を含めると軽く三十人は超えるでしょう。作者独特の言葉を織り交ぜて、そこを実に手堅く上手いこと描写しております。
今年の書評は超辛口で行くといいましたが、この作品に文句は言えません。
このシリーズが完結に向かっているような気がするのは少し残念です。
(まあ、作家としてこの感覚を別の作品で、という気持ちは分かりますが……)
9/10点


