作者
瀧口雅仁
題名
古典・新作 落語事典
出版社
丸善出版
出版社による梗概
●江戸・東京落語を中心に古典落語と新作落語の「あらすじ」と詳細な「解説」を700演題収載。
●落語の種別(人情噺、怪談噺など)、舞台、季節、登場人物など多数の索引から演題検索が可能な画期的試み。
●『怪談牡丹灯籠』『真景累ケ淵』『名人長二』などの圓朝作品をはじめとした長編落語の全貌がわかる構成。
●『中沢家の人々』や『林家彦六伝』などの地噺、柳家金語楼による落語や落語芸術協会に伝わる落語をコラムで紹介。
●古典落語の系譜を遡り原話や原典を再調査。資料として活用できる価値ある事典。
●古典落語の舞台となった江戸・東京の地名を現在の地名と対照させた「落語江戸歴史地名事典」を掲載。
出版社による本書の活用の仕方より http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/rakugojiten/index.html
落語の演題が分からないと本書を十分活用できませんが、巻末の索引を使って演題を調べることができます。これは他の「落語事典」にはない便利な機能です。
調べたい落語の演題が分からずイライラするとき、寄席で聴いた噺の演題が分からないとき、落語会やTV・ラジオで聴いた噺の演題を忘れてしまったときなどに使うことができます。
記憶に残っている噺の中のキーワードを二、三思い出せればOKです。
以下に三つの例をあげて説明します。
■【例1】紫檀楼古木(したんろうふるき)にたどり着くには
「(1)寒い季節、(2)キセルの修理をするお爺さん、(3)どういう売り声かは忘れたが、売り声が出てきた」と思い出したとします。 (1)で「季節の噺」の「冬」(340ページ)を引く、(2)で「事物・事象・その他索引」の「キセル」を引く(428ページ)、(3)で「行事・行動・習慣」索引の「売り声」を引くと、「紫檀楼古木」にたどりつけます。
■【例2】菜刀息子(ながたんむすこ)
「(1)恐い親父、(2)その息子が乞食、(3)団子をめぐんでもらう」と思い出したとします。 (1)で「職業・人物(普通名詞)索引」(374~375ページ)の「父親」を引く、(2)で「職業・人物(普通名詞)索引」の「乞食」(370ページ)を引く、(3)で「食べ物・嗜好品索引」の「団子」(404ページ)を引くと、「菜刀息子」にたどりつけます。
■【例3】水神(すいじん)
「(1)女の烏(からす)、(2)烏との約束、(3)羽織で飛ぶ」と思い出したとします。 (1)で「動植物索引」の「烏」(397ページ)を引く、(2)で「行事・行動・習慣」索引の「約束」(423ページ)を引く、(3)で「事物・事象・その他索引」の「羽織」を引く(435ページ)を引くと、「水神」にたどりつけます。
定価
A5判 本体4,800円+税
感想
あたくしの記事にコメントをいただけるMarsさんのエントリーで『古典・新作落語辞典』がありました。リンクはこちらです。 http://blogs.yahoo.co.jp/mars2007_mm/21407290.html
正しくは「古典・新作 落語事典」ですね。(^^)
購入時にパラパラと捲って以来、あたくしの書棚に転がしておりました。Marsさんの記事で改めまして精読(と言うほどの本ではないのですが……)してみました。
まず、柳家小ゑん師匠がお怒りになっているTwitterですが、こちらになります(無断でのリンク、お差し合いであれば消します) https://twitter.com/koen6330/status/826431012297011200
https://twitter.com/koen6330/status/826465243026989058
ことの顛末をあたくしなりに解釈して、簡単に記しますと、(間違いがあれば訂正して下さいまし)
『無料で語釈(項目の解説)を依頼しておいて、いざ本になったら「新作」とは名ばかりで片手落ちもいいところだ! こりゃぁ納得できねぇ! 増刷時からはあっし(小ゑんさんのことです)の書いた項目は削除してくだせぇ』
といったところでしょうか?
過去に辞書の編纂に携わった者として書きます。
語釈の原稿料は大変に安いです。大学の先生や、その道の専門家に依頼するのですが、一項目あたりこんなに安くて良いの? と言うような金額です。金額以上に書く側(編纂者側ではなく)の使命感が大きい分野なのです。
本書の巻末に記載されてます「編集・執筆・資料協力」に24名の噺家があります(円丈さんも小ゑんさんも記載があります)が、きっと多くの方が無料で協力なさったことだと推察いたします。
協力をいただいた側の礼儀(商習慣)として、最終稿の校正はもちろんのこと、全体の構成を説明すべきだったのではないでしょうか? これが今回抜け落ちてしまったために、発刊後に協力者の不快に繋がったのだと思います。辞書の出版もある丸善としては失策といえるでしょう。
ちなみにあたくしの手元にあるのは「平成28年8月25日 第2刷」で、初版との違いは分かりません。小ゑんさんの記載があるので改稿されていないとは思いますが。
さて、本書ですが、落語の演目700について、あらすじと解説が付けられております。過去の落語解説本と比較して、取り立てて特色があるわけではありません。敢えて言えば、最近の噺家が多少は登場しているくらいでしょうか。
解説にしても、目新しいものはありませんし、踏み込み不足を感じます。
「本所」には「ほんじょ」のルビしかありません。「ほんじょう」もあってしかるべきでしょう。
「朝友」は「あさとも」となってます。わざわざ解説で松月朝友(本書にルビは振られていませんが、しょうげつ ともふさ です)を書いているにもかかわらずです。解説で圓喬の速記を持ち出していますが、速記にははっきりと「ともふさ」とルビがあるはずです。
まあ、最大公約数的に理論の冒険を排除した結果、こんな本になりました。と、言ったところですね。
著者の瀧口雅仁(たきぐち まさひと)は大学講師として、カルチャースクールの落語講座も持っているようですから、内容にそぐわぬ4,800円という値段は、そちらで本書を配る(受講料込みで)目的もあるのではないかと、邪推しました。
『増補落語事典』(東大落語会編・青蛙房)に軍配を上げます。
追記です
肝心なことを書き忘れておりました。
この本は横書きのため、左開きとなっております。
日本の事典としては珍しいです。
この辺にも、講座の資料として使う気満々だなぁ、と思うのです。

