作者 小川洋子
題名
ことり
出版社
朝日新聞出版
出版社による梗概
四六版:12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説。親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。青空薬局で棒つきキャンディーを買って、その包み紙で小鳥ブローチをつくって過ごす。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。静かで、温かな二人の生活が続いた。小さな、ひたむきな幸せ……。そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女と出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない会心作。
文庫版:人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりをよく理解し、こよなく愛する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。やさしく切ない、著者の会心作。解説・小野正嗣。
定価
四六版 本体1,500円+税
文庫版 本体580円+税
感想
小川洋子の静謐な世界に浸る作品です。小鳥のさえずりすら聞こえてこないような静かな静かな世界。主人公である小鳥の小父さんもまた清黙(正しくは静黙ですがあえてこの字をあてたいです)です。
読み手が熱く滾(たぎ)っていれば少し冷ましてくれる。読者の心が冷え切っていればほんの少しだけ温めてくれる。そんな作品です。
切なく、胸が苦しくなる内容と、小川洋子独特の文体が相まって、読者を選ぶ作品なのでしょう。合わない読者はトコトン合わないと思います。
かくいうあたくしも小川作品には二の足を踏みます。文体が少し……。
出版社の梗概にあります「青空薬局」は「青空商店」の誤植です。
書題の「ことり」。漢字の「小鳥」ではなく、ひらがなで書いてあります。「ことり」にどのような字をあてるのか? 読者それぞれでしょう。
6/10点


