作者
宇江佐真理
題名
竈河岸 髪結い伊三次捕物余話
出版社
文藝春秋
出版社による梗概
伊三次シリーズに、大物新キャラクター登場!
自らの手下を持つよう父に言われた龍之進。頭に浮かんだのはかつて誘拐の下手人として追いながら、ついに捕えられなかった男だった。
定価
本体1,550円+税
感想
ほぼ二ヶ月ぶりの宇江佐作品は、この書評初登場の『髪結い伊三次捕物余話』シリーズです。
第一作「幻の声」で1995年に作家デビューを果たし、恐らく死の淵まで書き続けたシリーズの第十四作です。
このままでは完結までたどり着けないと考えた作者は、第九作「今日を刻む時計」で十年の時を作中で進めました。そして第十作「心に吹く風」文庫版のあとがきでは自らの癌を告白しました。その後,、このままシリーズが未完でもいいかな、と心境を変化させます。
そしてこのシリーズについて宇江佐はこうも語っております。 髪結い伊三次のシリーズを家族の話と片づけられるのは承服できません。私は人が人として生きて行く意味を追求したいのです。それに家族の問題がたまたま絡(から)んで来るだけのことなのです。
ライフワークというにはあまりに壮絶に殉じたシリーズです。二十年を経てこの作中に印象的な文章があります。失礼を承知で引用します。
「お待ちしておりました。ずっとお待ちしておりました」
この一文のために作者は書き続けたのではないかと思ってしまいます。それほど、見事な文章です。鳥肌が立ちました。
いつか、こんな文章が生きる作品を書いてみたいですね~
次は、シリーズ最終巻「擬宝珠のある橋」です。読み終わったらきっと泣いてしまうだろうなぁ。
9/10点


