作者
北村薫
題名
中野のお父さん
出版社
文藝春秋
出版社による梗概
〈本の達人〉が贈る新名探偵シリーズ
体育会系な文芸編集者の娘&定年間際の高校国語教師の父が挑むのは、出版界に秘められた《日常の謎》!
□「応募してませんよ、わたしは」
新人賞最終選考に残った候補者からの思いがけない一言は?(夢の風車)
□「実は、扱いに困っている手紙がありましてね」
ある大物作家に宛てた女性作家の手紙には愛の告白が?(幻の追伸)
□「わたしは殺人事件の現場に行き合わせることになったわけです」
定期購読者の話を聞いているうちに思いもよらない事態に?(茶の痕跡)
ほか、大手出版社の文宝出版を舞台に繰り広げられる8つのミステリーの推理の結末やいかに……。〈円紫さんと私〉〈覆面探偵〉〈ベッキーさん〉シリーズほか、多くのファンを唸らせてきた名手による、新たな名探偵コンビが誕生。
定価
本体1,400円+税
感想
書籍や原稿、そこに書かれた言葉などの謎を解明する物語です。北村薫お得意の分野で、安定して読めます。カテゴリーとしては日常の謎を扱ったアームチェア・ディテクティブ(安樂椅子探偵)ということになるのでしょう。
8つの短編収録されてますが、この手の話が好きな読者にとっては、どれも秀作で堪らないものがあります。
落語に因んだ噺がありましたので、作中の謎とは別の解釈をあたくしがいたします。
『闇の夜は吉原ばかり月夜かな』
この句の解釈は、
『闇の夜は、吉原ばかり月夜かな』
『闇の夜は吉原ばかり、月夜かな』
このように読点の位置により全く意味が違ってきます。
上は、闇夜で吉原だけが月夜のように輝いている。
下は、月夜の中で吉原だけが闇夜である。
解釈を巡る話は本編に任せるとして、落語では絶対的に上の解釈でなくてはなりません。
この句が引用される落語は『文七元結』なのですが、当然上の解釈で引用されております。
左官の長兵衛が夜の吾妻橋で吉原の方向を見て、身を売った娘に思いを馳せる場面です。
この噺の季節ですが、ほとんどの噺家は暮れの押し迫った12月28日に設定しております。
陰暦の28日は月齢26.6です。そして月の出は午前3時44分なのです。長兵衛が吾妻橋に着いた時には月はまだ出ていないのです。あたくしにとりましてオッカムの剃刀です。必然なのです
8/10点


