作者
藤原審爾 著 結城信孝 編・解説
題名
昭和の短篇一人一冊集成 藤原審爾
出版社
未知谷
出版社による梗概
残しておきたい短篇がある……
今思うと昭和には香りがあった――
短篇の名手各一冊、全五巻、函入愛蔵版
『昭和の短篇一人一冊集成』第三回配本!
「記憶に残る短篇小説は、クラシック音楽やジャズのスタンダード・ナンバーを想起させる。名篇と名曲。両者に共通しているのは短い時間のなかでリプレイが可能という利点と、何よりも長い歳月をくぐり抜けてきた耐久力にある。書棚から引っぱり出す一冊の作品集。お目当てのページを開く瞬間には心が躍る。この短篇セレクションは小説雑誌華やかなりしころの昭和の文化遺産であり、短篇小説の魔力を思う存分味わわせてくれる」(編者の言葉)
時代小説、ミステリ、ハードボイルド、恋愛小説、動物小説……
大衆小説~中間小説~純文学の隔てなく
「小説の神様」と呼ばれた藤原審爾――
浮世のしがらみは辛く切ない、芸者の恋模様、直木賞受賞作「罪な女」
中卒でなくても試験を受けられる――学校への小さな夢いじらしい希望「赤毛」
基地の街に住む最長老パンパン“お君姐さん”の艶笑譚「紅バラお君」
二度映画化されたチンピラと令嬢の純愛物語「泥だらけの純情」など
日本の小説を読みたかったら、藤原審爾一人で事足りる!? といっても過言ではない、小説の名人の10作品収録!
定価
本体3,000円+税
感想
自転車競技のお好きな方以外にはあまり知名度のない出版社「未知谷(みちたに)」から配本された『昭和の短篇一人一冊集成』の一冊です。他には吉行淳之介、戸川昌子、源氏鶏太、色川武大です。330ページの函入愛蔵版で3,000円ですから、1ページあたり10円とお高いです。(相変わらずあたくしはセコイです)
書題は忘れましたが、親父の遺した本の中に藤原審爾(ふじわら しんじ)がありました。供養代わりに読んだと思うのですが、記憶にありません。12歳の純真無垢な少年にとって藤原作品は印象が薄かったようです。以来実に久しぶりに読みました。
こんな面白い作家を読まずにいたなんて、読書人生損をしておりました。
梗概にあります「小説の神様」も頷けます。
ほとんどの方にとって知らない作家であり、忘れ去られた作家かもしれません。ある時期を境に著作は手に入りづらくなりました。紀伊国屋のデータベースで確認したところ、単独著書82冊中、本作と「昭和水滸伝」上・下の三冊だけが在庫ありで、残りは全て絶版(もしくは手に入らない状態)でした。恐らく図書館でも似たり寄ったりの状況だと思います。
どれも良作なのですが、とりわけ「殿様と口紅」と「泥だらけの純情」が出色です。
「泥だらけの純情」は今で言うフラグが立ちまくりの作品ですが、少しずつ読者を裏切りながら、最後の一行にしてやられます。
「殿様と口紅」巻末の解説から部分引用させて頂きます。 こういう小説が書けるということを羨ましく思う(平林たい子)
うまさという点ではちょっと誰も及ばないだろう(井上靖)
人の心のためにかいたもの(藤原審爾 本人)
「泥だらけの純情」は二度映画化されたみたいです。最初は吉永小百合と浜田光夫で、後に山口百恵と三浦友和だそうです。映画としての出来は最初のもの、ヒロインは山口百恵が良かったらしい……。
全くの蛇足ですが、子役時代の浜田光夫にあたくしがダッコされた写真がウチにはあります。当然ながらまったく記憶にありません。
「前夜」も雷蔵(そろそろ市川を付けないとわかりづらくなりましたでしょうか?)、成田三樹夫、野川由美子で映画化されたようです。
これまた、全くの蛇足ですが、お袋と成田三樹夫がダンスをしている写真がウチにはあります。お袋は酔っ払っていてまったく記憶がないそうです。
作者の藤原審爾は自宅で勉強会を主催して、色川武大、江國滋、高橋治、三好京三、山田洋次など後進を育てました。女優、藤真利子(本名 真理)の父親です。
女優になることを大反対された真理は家を飛び出して、7年顔を合わせなかったそうです。父親が癌により余命半年とわかると全ての仕事をキャンセルして父に付き添うことにしました。7年ぶりの再会から僅か10日後、父の審爾は「君が輝いていたらきっとまためぐり会えるだろう」の言葉を真理に遺し亡くなりました。
図書館でも数が少ないと思いますが、何か一冊でも見つけましたら、お読みいただきたい作家です。
8/10点
昭和の短篇一人一冊集成 藤原審爾
Author:
立花家蛇足
Genre:
»
藤原審爾
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Posted by 立花家蛇足
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